情報知識学会誌, Vol.2

情報知識学会誌, 1991, 2(1), 1-8

情報社会の生態学
長尾 真

 今日、情報は社会のすみずみにまで行きわたるようになり、人それぞれによりそれぞれの仕方で活用されるとともに、また種々の影響を社会と個人に与えるようになってきた。従って、情報・情報技術の社会における実態とその影響をよく観察し、情報と人間との相互作用、相互関連性について考えることが必要である。即ち情報社会というものに対する生態学的研究が今日必要とされていると言える。本稿では、これを「情報社会の生態学」と名づけ、その試みを示す。情報の代表的な表現媒体は言語であるが、音や図形・画像、さらには動作などによっても行なわれている。かつては、印刷物に固定された情報以外はすべてその場で消滅してしまうものであったが、電子技術・計算機技術によって、各種の情報が記憶され、処理され、種々の形に変換されて利用されるようになってきた。情報爆発という言葉が示すように、情報表現技術によって膨大な情報が利用できるようになってきているが、それに従って、1人の人間にとって必要な情報の割合が極端に小さくなり、真に有効な情報の取得が困難となってきている。ここでは、社会と情報、個人と情報の関係として検討すべき課題を列挙し、情報の有効性と危険性について考える。

情報知識学会誌, 1991, 2(1), 9-22

歴史系支援情報処理研究の基礎的課題
八重樫 純

 一般に博物館は、基本的に(1)資料の収集と管理、保存、伝達、(2)展示、(3)体系的な学術研究、という三側面を有し、それぞれが有機的な関係を有して知識活動を展開する社会的存在であると認識する。歴史的博物館においては、考古学、歴史学、民俗学、美術史学等の複合専門領域から構成されているのが一般的である。  ここにおける情報処理システムの活用は多方面に考えられ、数々の論が展開され、かつその活動は長年に渡り行なわれてきた。しかし、全般的に評価されるに至っているとはいいがたい。  コンピュータはデータとその活用環境が存在して、はじめて機能しえ、かつデータの性質とそのデータ操作(情報処理)方法により、そのあり方が決定されてくる。  このため、データの形成以前の歴史的資料、事象等、利用環境に対する情報学的基礎分析が最も基本である。抽象的論議は空論となりかねず、したがって部分的であれ現実のデータをもとにし、実働のシステムとして形成・動作させなければ、この社会における説得力を有さない可能性がある。これらの認識の上で、歴史系支援情報処理の研究を進めていき、これらの基本的問題、研究のコンセプト、経過概要などについて示す。

情報知識学会誌, 1991, 2(1), 23-48

SGML形式による学会誌全文データベースの構築と印刷
石塚 英弘

 投稿者が作成した電子原稿から学会誌用のSGML形式全文データベースを構築し、それから学会誌を印刷するシステムを開発した。印刷はSGMLにリンクさせたLaTeXを用いて行った。構築したSGML形式データベースには本文のみではなく、表・図・写真も全て含まれている。ここで、SGMLは Standard Generalized Markup Languageの略で、電子出版の概念に基づいた国際規格(ISO-8879)である。 和文の論文・総説・講演などの文書構造を調査し、その結果に基づいてDTD(Document Type Definition)を設計した。また、複雑なSGMLのタグを用いずに、通常のワープロを使用して原稿を作ることができる簡易マーク付け法を提案した。 1990年、本システムを情報知識学会誌の創刊号に適用し、同年暮れにそれを出版した。

情報知識学会誌, 1991, 2(1), 49-62

木版刷チベット文献の文字自動認識の試み
小島 正美, 川添 良幸, 木村 正行

 コンピュータによる文字自動認識の技術は、日本語や英語などの活字文献に対しては、今日実用段階までに発展している。しかし、手書き文献認識は非常に難しく、特に今回認識対象に取り上げた木版刷りチベット文献の自動認識の研究は世界的に見てもまだなされていない。これらの文献を自動認識することができれば、インド原典、チベット訳文献、漢訳文献などの調査研究する学者が、従来古文書の読み取りに当てていた時間の大半を機械化することが可能で、その結果なすべき文献学に専念できる点においても大変意義がある。 本研究で採りあげた木版刷りチベット文献の文字は、文字認識の分類上では手書き文字に属すると共に、文字の行間隔が狭く文字が複雑に重なりあっている点が特徴である。そこで、従来の縦方向射影では切り出せない文字に対する処理として、チベット文字特有の横棒(MHL:Main Horizonal Line)に注目した文字切り出し法を用い、また認識には重ね合わせ法と構造解析法を組み合わせた新しい方法を採用した結果、初期的試みとしては十分な認識率を達成することができた。

情報知識学会誌, 1991, 2(1), 63-70

分散型材料データベースのためのインターフェイス開発(1)
Interface Developments to Distributed Materials Data Systems(1)
陳 海龍, 岩田 修一

 分散型材料データベースシステムを統合するためのインターフェイスの開発を行なった。材料情報は履歴、構造情報のキャラクタリゼーション、データ編集における汎化・集約の程度によりさまざまな内容、特徴、利用可能性を持つ。そうした多様性のある材料情報を材料設計へと有効利用するため、全体-部分、集合 -要素などの有用と考えられる関係を抽出・定義して構築した辞書を用いて、材料情報の統合を試み、その有用性を示した。本システムは、エンジニアリングワークステーション上に材料データベースを構築し、インターフェイス開発用ツールとしては、INGRES/Windows 4GLを用いたもので、本格的材料システムへのプロトタイプである。

情報知識学会誌, 1991, 2(1), 71-82

有機合成研究用の情報ベースシステムにおける学習および類推
Learning and Analogical Reasoning in the IBS for Organic Synthesis Research
王忠清, 鄭四清, 千 旭, 山口 和紀, 北川 博之, 大保 信夫, 藤原 譲

 機会学習、類推等の機能を持つOS-IBS(Organic Synthesis Information-Base System)と呼ばれる情報システムについて報告する。有機合成に関する概念を含むイデックス情報と官能基、試薬等の反応に関する情報等を含むデータベースの利用によって、リンクを自動生成し、情報空間が構造化され、情報ベースシステムが実現された。この情報の構造化によって機械学習が実現された。また構造化された情報空間の中で化合物の構造や官能基に関する類似性の評価によって類推の機能が実現された。有機合成の研究に必要な情報を収録管理するデータベースシステムCORESがOS-IBSの情報源として利用された。

情報知識学会誌, 1991, 2(1), 87-90

コンピュータ時代の数学教育
杉山 真澄

 コンピュータの画期的な進歩は、義務教育における数学教育を根本から考え直す必要を与えている。そこで数学教育の現状と問題点を挙げ、コンピュータ時代に相応した数学教育について考える。

最終更新日: 2011-02-07 (月) 11:55:00

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