1995年にインフルエンザ菌ゲノムが公開されてから既に30以上の微生物のゲノム配列が決定され公開されている。さらに、100種類以上の微生物ゲノムがここ1〜2年内に公開されると思われる。それらのゲノムデータは配列を決定したゲノムプロジェクトチームからはもちろんであるが、同時に国際DNAデータバンク(DDBJ/EMBL/\\GenBank)からも公開される。しかしながら、そのデータのフォーマット、表現方法、さらに配列解析から生物学的意味付加(アノテーション)までの手法が共通でないために、有用な知見をもたらす比較ゲノム解析を行うことを実施することが困難であった。そのため、我々は既に公開されている微生物ゲノムに付加されている生物学的情報や配列を検索、取得するシステムとしてゲノム情報ブローカ(GIB)を開発した。GIBは比較ゲノムの研究に役立つものと考えている。GIBはhttp://gib.genes.nig.ac.jpで公開されている。
Whole genome sequences of more than 30 microbial species have been determined and open to the pubic since 1995. In addition, more than 100 microbial genome sequences are supposed to be disclosed or completed in a couple of years. The data are available either from the sites of groups that determined the genome sequence or from DDBJ/EMBL/GenBank International Nucleotide Sequence Databank (INSD). However, it is a daunting task for us to apply comparative genomics to the increasing number of microbial genomes. It is due to inconsistency of data format, data representation and even protocols of data annotation in the diverse data sources. Therefore, we developed Genome Information Broker (GIB) that allows us to retrieve and to display the part and/or whole genome sequences and the relevant biological annotation of all the microbial genomes together. Thus GIB will be a powerful tool for the study of comparative genomics. The URL address of GIB is http://gib.genes.nig.ac.jp.
遺伝子発現の一過程である翻訳における最適コドンを決定することは、遺伝子の発現量を推定するための重要な因子の一つである。本研究では、ゲノム全体の遺伝子を対象にバイオインフォマティクス的立場から多変量解析法に基づいて原核生物(バクテリア)と真核生物における種固有のコドン使用多様性について検討した。 原核生物はもとより単細胞真核生物(Saccharomyces cerevisiae、Scizosaccharomyces pombe)および多細胞真核生物(D. melanogaster、C.elegans)についてもコドン使用多様性に生物が有するtRNA種が大きく影響を及ぼしていることを示した。さらには、広範囲の生物種の種固有のコドン使用多様性に影響を及ぼす因子を検討した。
ヒトゲノムの全配列に続いて30種類以上の他のゲノム配列の完成が報告されている。このようにゲノムの解明された現在、転写レベルのTranscriptomeと翻訳レベルのProteomeの2つのprojectが注目を浴びて来た。 Proteome projectは生物の組織、細胞等の特定の部位で特定の時間の断面で発現される全蛋白質を分離してその各々の蛋白質を同定する事を目的としている。現在この目的の為に蛋白質の等電点と分子量で分離する二次元電気泳動法が主として用いられ、分離した蛋白質の同定にはN末端からのアミノ酸の配列解析、又蛋白質spotをゲルと共に切り取りトリプシン等の蛋白分解酵素で分解し、抽出して出て来たペプチド断片を質量分析装置で分析するペプチドマスフィンガープリント法等が使われている。これらの方法は分析感度が非常に高く前者で1pモル後者で10〜100 fモルで行われ、現在それらを自動化し且つ迅速に行うかという事に努力が集中している。一方これらのデータを標準化しデータベース化する努力が行われている。二次元電気泳動のイメージマップ、その実験を行った条件をGeneralデータとして入力、個々のspotの蛋白質のデータとその関係する20項目のデータをPIRのフォーマットに従ってspotデータとして入力してある。これらのデータベースについて概略を述べる。
国立遺伝学研究所では、1986年より塩基配列データベースの開発に着手し、日本DNAデータバンク(DNA Data Bank of JAPAN, 以下DDBJ)として国際的な事業を展開している。現在DDBJは、国際DNAデータバンクの1極として、米国のNCBI、ヨーロッパのEBIと日々データを交換し公共的な塩基配列データベースの構築支援に寄与している。この3極で集めれたデータは、DDBJ/EMBL/\\Genbank国際塩基配列データベースとしてまとめられ、一般ユーザへ公開されている。
最近注目されている電子メディアが学術情報流通において果たす役割に関して考察した。その際、電子メディアの持つ技術的利点のみに注目するのではなく、科学者たちによる独特な性質を持つ科学コミュニケーションの観点から考えた。医学、心理学、物理学、歴史学分野における日本の研究者たちの電子メディア(電子メール、メーリングリスト、WWW、電子雑誌) 利用状況調査を引くことで、研究者たちは全般的には電子メディアを利用しているが、電子雑誌の利用に関しては分野による差が大きいことを示した。出版社・学会による学術雑誌を中心とする既存学術情報流通システムに対して、電子メディアを利用することによって初めて可能となるオープンアクセスな流通のあり方の提案に関しても検討した。
American Society for Information Science and Technologyを中心に進んだ研究は、図書館・情報サービスの歴史や情報学の分野それ自体の歴史を扱って成果を挙げている。本稿では、そのような近年の情報学における歴史学的研究の動向を踏まえ、情報学の立場からの歴史研究とメディア史(コミュニケーション史)の双方の視点を有機的に統合することによって、より包括的な情報史の研究を実現するための方策について論じた。情報環境の概念を導入すると、情報学の視点からの歴史研究は情報環境の構築・準備および管理という観点から構造的に把握し直すことが可能である。これに対し、メディア史の観点からの歴史像、つまり情報環境に囲まれた人々の情報探索行動や利用行動に焦点を当てた歴史記述を付加することによって、総合的な情報史の歴史観が得られると結論付けた。
「情報とは何か」という問題は、簡単にみえて、複雑にして難解な課題である。これまで提案された「情報」の定義は、多元的・階層性となり、かつその本質ではなく、性質や効用を説明するにとどまっていた。本質は本来一元的定義を求める。情報自体には未来性も過去性もなく、現存在でしかないという性質があることから、情報が「時間」概念と似ていることに着目した。だが、情報は時間と違い、未来事象への関連性が強い。未来とは可能性であり、可能性の本質を「反情報」であると仮説した。反情報が、あらゆる存在物にcon-formされて情報となり、情報が存在物を in-formするという構造を提案する。反情報概念を用いると、これまで説明が困難であったような事象も、説明ができることも発見した。ウィーナーは、あらゆるものは「物質とエネルギーと情報からなる」とした。反情報概念を用いることで、物質、エネルギーに比肩する「情報」の本質がみえてくる。
本研究はWWWとZ39.50を透過的に利用できるデータベース選択支援環境を提案し、その環境を実現するWWW- Z39.50クライアントを開発した。この環境ではZ39.50データベースに関する情報をWWW上で共有して利用できるだけでなく、利用者が自由にデータベースを組織化し、利用者同士でお互いに参照・利用できる。また、共有された情報であるデータベースリストの中から任意の一つをクリックすることによって、該当するデータベースの検索画面が起動し、直ちに検索を開始できる。
本稿は、オーストラリアにおいて、著作権法の枠組みの中で行われている、放送番組 および放送事業者の保護のあり方を、日本におけるそれと比較検討し、その仕組みを 明らかにしようとするものである。オーストラリアにおいては、日本のように、 放送事業者の放送行為に著作隣接権を認めるのではなく、放送行為の成果物たる放送 自体に、「放送」としての著作権が認められている。また、事前に収録された放送番 組については、「放送」の著作権とはべつに、「録音物」または「映画」としての著 作権が認められている。本稿は、「放送」、「録音物」、「映画」の順で保護の構造 を述べ、最後に日本法と比較したオーストラリアの保護制度の特長を考察するものである。