#title(メールマガジン 45号) *メールマガジン 45号 [#nb2e846e] #pre{{ ********************************************************************** ☆★☆ 情 報 知 識 学 会 メール マ ガ ジ ン ☆★☆ 2011.5.25.☆No.45. 情報知識学会メール マガジン読者の皆様 香川大学での年次大会も今週の末と迫りました。 25の発表論文の他、「記念シンポジウム:四国の知の集積」など、2日間に わたって開催されます。どうぞお誘い合わせの上ご参加ください! また、岩田常務理事より、震災・原発事故に関連して、ご専門の立場から時宜 を得た貴重なご寄稿を頂きました。ご一読の上、共に考えたいと思います。 =================================================================== 5月号 C O N T E N T S (目次) =================================================================== ◇◆東日本大震災・福島原発事故関連寄稿◆◇ 【データとリスクの学問】岩田修一(CODATA部会) ◇◆情報知識学会 第19回年次大会◆◇ 5月28日、29日香川大学で開催されます。 ◇◆情報知識学会 平成23年度第1回理事会議事概要◆◇ 5月11日開催されました。 ◇◆情報知識学会誌◆◇ 【J-STAGEからのお知らせ】 ◇◆関連行事のご案内◇◆ 【アート・ドキュメンテーション学会2011年度年次大会のご案内】 ☆★……………………………………………………………………………☆★ ┌──────────────────────────────── ◇◆東日本大震災・福島原発事故関連寄稿◆◇ └──────────────────────────────── 【データとリスクの学問】 岩田 修一(CODATA部会) 「多くの技術者は100年程度の時間でしか考えることができない…」、 そんなメールのやりとりを歴史学者のCarol Gluckさんとしたのがきっかけ で久しぶりに方丈記を読んだ。 “また元暦二年のころ、おほなゐ(大地震)ふること侍りき。そのさま よのつねならず。山くづれて川を埋み、海かたぶきて陸をひたせり。 土さけて水わきあがり、いはほ(巌)われて谷にまろび入り、なぎさこぐ ふねは浪にたゞよひ、道ゆく駒は足のたちどをまどはせり。いはむや都の ほとりには、在々所々堂舍廟塔、一つとして全からず。或はくづれ、或は たふれた(ぬイ)る間、塵灰立ちあがりて盛なる煙のごとし。地のふるひ 家のやぶるゝ音いかづち(雷)にことならず。家の中に居れば忽にうちひしげ なむとす。はしり出づればまた地われさく。羽なければ空へもあがる べからず。龍ならねば雲にのぼらむこと難し。おそれの中におそるべかり けるは、たゞ地震なりけるとぞ覺え侍りし。” (鴨長明『方丈記』、青空文庫より引用) ※参照URL 1) 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)との類似性で引用されることの多い 貞観地震(貞観11年5月26日)については、菅原道真、大蔵善行らが中心になっ て編集したとされる歴史書「日本三代実録」に同様の記述がある。歴史的な事 実の多くは歴史書や随筆、日記の記述にみることができ、そしてもっと前の事 実に関しても、現代に伝わる神話、仏典、聖書、聖典の記述:テキストデータ から"臨場感"を持って推測できる。 一方、高々、数百年の蓄積しかなくても、科学の目を通せば、約137億年の 宇宙の歴史も約46億年の地球の歴史も精緻な観測値からなる数値データとメタ データをてがかりにして誰もがほぼ同じ理解に到達することが論理的には可能 である。しかしながら科学的データから“事実に関する臨場感”を獲得するこ とは容易ではない。 3月11日以降、マグニチュード、シーベルト(Sv)、ミリ、マイクロ、ベク レル(Bq)等々の数値がメディアにあふれているが、1mSvと20mSvの違いにより 自分の寿命がどの程度短くなるのかという未来について“臨場感”をもって説 明できる人はいない。人々の不安は不確実な未来に向けられ、不確実な未来に 希望や絶望を与えてくれる言説に飛びつき、裏切られれば失望し非難する。全 てのデータは過去の事実に関する断片的な情報であり、言語を獲得するのと引 き換えに野生的本能を失ってしまった私達人間は過去からしか学習できない。 未来に関する不確実性は、過去の事実についての完璧な理解に基づいてこそ 評価できる。『JRの技術チームは地震の初期微動検知から停車動作に入るま での動作を1秒短縮できる「新幹線早期地震検知システム」を開発し、東北新 幹線の車両すべてにこのシステムを導入した結果、乗客を乗せたすべての車両 で脱線を防ぎ、高速走行中の脱線という最悪の事故を回避し、一人の犠牲者も 出さなかった。』という驚嘆するような動かしがたい事実の積み重ねが社会的 な信頼を獲得することになる。それでも東北新幹線の線路からおよそ50キロ 離れた牡鹿半島の地震計の加速度の感知から、架線の停電、走行中の新幹線の 非常ブレーキ、減速、本震、列車の停止にいたるまでの事実関係の連鎖が、たっ た数十秒の間の出来事であったことを考えると、実際にはかなり際どかったこ とが想像できる。素晴らしい点は、そうした成功、事実関係の背後にある様々 な可能性、複数の事象の多様な展開を想定して未来の不確実性に備えることを JRの技術者達が開始していることで、そうした不断の努力が社会からの信頼を 維持、獲得するためには重要である。 一方、福島第一プラントにおける困難は、地震と津波によって電源を失いプ ラントの内部の状況を計測することが十分にできなくなったこと、プラントの 温度、圧力、化学を自在に制御するための手段を失ったこと、そして放射性核 種の漏洩による現場の放射線量の増大が損壊した現場へのアクセスの大きな制 約になっていることにある。プラント内部の直接的なデータが十分には得られ ていない状況で放射性物質の放出を抑制し、食い止めるための努力が継続して いるが、入手可能なわずかなデータを手掛かりにした事故終息への作業は依然 として一進一退の試行錯誤の連続である。筆者も含めた原子力関係者に求めら れているのは、第一に完璧でない複雑なシステムのふるまいの的確な把握と問 題解決に向けての着実な成果の積み上げであり、第二に将来の可能性、リスク への周到な準備と社会への適切な説明である。そこでは能動的で積極的で先見 的で挑戦的で粘り強く注意深い、旧来の学問の枠組みを超克した専門家集団の 努力"scio"と "risicare"を必要とする。 「FUKUSHIMA」に関するデータ、知識の徹底的な再編を通して、不確実性が高 く時定数も場所も時間も環境も異なるさまざまなリスクへの周到な準備が出来 ないだろうか。そして SHINKANSEN や FUKUSHIMA を基点にして、日本三代実録 とも方丈記とも全く次元の異なる、人工物の新たな学術、そして人工物の新た な歴史が創れないだろうか。FUKUSHIMA DAIICHI の現場での苦闘に想いを馳せ ながら、学問の現場でもTrans-science2)のような水平展開ではなく、もっと 根源的な考究を通して産業や被災地の現場と一緒になって苦闘し強固な連帯を 確立したいと思う。 そのように考えて試論、私論は以下の3)-6)で展開中である。今後は同志 を募り、データ科学、設計科学や情報知識学への胎動の準備を Data Science Journal や情報知識学会で共考したいと思う。積極的なご参加をお願いしたい。 ※参照URL: 1) http://www.aozora.gr.jp/cards/000196/files/975_15935.html 2) http://www.greenchemistryandsustainabledesign.org/Weinberg%20-%20Science%20and%20Trans-Science.pdf 3) http://www.businesswire.com/news/home/20110420005677/en 4) http://www.kagakudojin.co.jp/kagaku/web-kagaku02/c6606/c6606-iwata/index.html 5) http://www.jpgu.org/meeting/session/session_html/U04_e.html 6) http://www.l.u-tokyo.ac.jp/JASTS/main.htm ☆★……………………………………………………………………………☆★ ┌──────────────────────────────── ◇◆情報知識学会 第19回年次大会◆◇ └──────────────────────────────── ◆第 19 回年次大会は、いよいよ、来る5月28日土曜日から二日間、香川大学 幸町キャンパスにおいて開催されます。 本年は、四国の大学連携事業「四国の知」の記念シンポジウムも、同時に開催 します。 ※http://www-ek4.cc.kagawa-u.ac.jp/event/110502/post_18.html なお、事前の参加申込は不要です。直接会場にお越しください。 多くの皆様のご参加をお待ちしております。 実行委員長 堀 幸雄 (香川大学) 委員 田窪直規 (近畿大学) 委員 原田隆史 (同志社大学) 委員 梶川裕矢 (東京大学)↑ ◆開催概要 ◇日時: 2011 年 5 月 28 - 29 日 (土・日) ◇会場: 香川大学幸町キャンパス 研究交流棟 5F研究者交流スペース ※アクセスマップ: http://www.kagawa-u.ac.jp/access/saiwai/ ◇参加費:無料 ◇資料代: 会員無料、一般非会員3,000円、学生非会員1,000円 ◇懇談会参加費: 無料 ◇連絡先: 年次大会実行委員会 jsik2011 (at) whitebase.org ◇宿泊案内: Myトリップかがわ(香川県観光協会) ※http://www.my-kagawa.jp/ ◆なお、大会プログラムが一部変更になりました。 ※下記をご参照下さい: http://www.jsik.jp/?2011program ☆★……………………………………………………………………………☆★ ┌──────────────────────────────── ◇◆情報知識学会 平成23年度第1回理事会議事概要◆◇ └──────────────────────────────── ◇日 時 :2011年5月11日(水) 18:00〜20:00 ◇会 場 :凸版印刷(株)西館3階(東京都台東区台東1-5-1) ◇出席者:根岸、石塚、長塚、岩田、江草、小川、国沢、田良島、長田、孫、 高久、村井、細野。 ◇議 題: 主として平成23年度総会用資料案に基づき下記の協議を行った。 1.平成22年度事業報告・決算報告 収支について事務局より報告。予算7,672,192円に対し、実績7,589,851円で、 ほぼ計画通りとなった。貸借対照表では期末の正味財産1,900,797円で前年度 比56,395円の減で大差は無い。今理事会直前の監事会において監査を行い適正 と判定した旨、細野公男監事から報告された。 2.論文賞結果発表(長塚隆論文賞推薦委員長) 締切日までに到着した投票用紙を集計した結果、2011年度論文賞が決定した旨、 報告された。年次大会で公式発表され、受賞者により記念講演が行われる。 3.第19回(2011年度)年次大会 香川大学(高松市)で5月28〜29日の開催を目指し準備が進められている。 堀幸雄実行委員長をはじめ各委員・理事の尽力により発表者25名となり盛会が 期待される。会長から各理事に対し積極的に参加勧誘されるよう要請があった。 4.第16回情報知識学フォーラム 実行委員長を村井源理事に委嘱した。後日、その他理事等による実行委員会を 構成し、今秋開催する。開催日・会場など未定。テーマは昨年に引き続き、 「電子書籍」関連とすることも一案であるが、更に実行委員会で検討する。 5.メールマガジン月別担当予定 今回欠席の岡本メルマガ編集長より、文書で本年度分の月別編集担当者(案)が 提示された。指名された出席理事はこれを応諾し、欠席理事については、 後日、岡本編集長が連絡し、担当を決めることとした。 なお、今5月号は岡本編集長自ら編集担当する。 6.平成24〜25年度役員選挙 来春の役員改選投票実施を控え、選挙管理委員長の人選について、田良島常務 理事が心当たりへ就任打診を続行中。 7.平成23年度事業計画・予算(案) 本年4月11日の常務理事会で検討された事業計画・予算(案)について事務局 が説明し、担当部会長・各委員長の了承を得た。予算総額は7,295,797円。 前年度の実績を踏まえて編成しているが、隔年実施の役員選挙費用が加わった。 なお、今年度の年次大会は遠隔地開催のため特例として10万円追加している。 8.平成23年度総会 香川大学に於ける年次大会の冒頭、5月28日(土)正午から開催。会長・副会長・ 監事による当日の議案の報告、説明等、役割分担を決定した。 9.次回理事会 2011年5月28日(土)12:00〜総会終了後 於:香川大学 以 上 ☆★……………………………………………………………………………☆★ ┌──────────────────────────────── ◇◆情報知識学会誌◆◇ └──────────────────────────────── 【J-STAGEからのお知らせ】 ◆定期システムメンテナンス ◇次回定期システムメンテナンス 以下の時間帯にサービスを一時的に停止させていただきます。 5月28日(土) 10:00 〜 15:30 ◇定期システムメンテナンスの年間予定は下記から参照して下さい: ※http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsik/-char/ja/ ◆Internet Explorer 8 でのご利用について J-STAGEにおいてInternet Explorer 8で一部不具合が発生する場合が報告 されております。詳細は、こちらをご確認ください。 ◆東北地方太平洋沖地震(東日本・東北関東大震災)による大規模停電回避等 のため、J-STAGE(投稿審査サービスを含む)が予告なく一時停止される 場合があります。みなさまのご協力をお願い申し上げます。 ☆★……………………………………………………………………………☆★ ┌──────────────────────────────── ◇◆関連行事のご案内◆◇ └──────────────────────────────── 【アート・ドキュメンテーション学会2011年度年次大会のご案内】 ◇日時:2011年6月11日(土) ◇会場:東京国立博物館 平成館大講堂 ◇主催:アート・ドキュメンテーション学会(JADS)・東京国立博物館 ◇後援:情報知識学会 ※情報知識学会会員は参加費がJADS会員扱いとなります。 申込フォームの「ご所属」欄に「情報知識学会」と書き加えてください。 ※お問い合わせ:アート・ドキュメンテーション学会事務局 〒166-8532 杉並区和田3-30-22 大学生協学会支援センター内 電話:03-5307-1175 Email(大会関係専用アドレス)jadsevent@gmail.com ※当日は、東京国立博物館「西門」をご利用ください。 ※展示(総合文化展[平常展]・特別展)ごらんいただくことはできません。 ◆スケジュール ※報告者・題目等、変更される場合があります。 9:30 受付開始 10:00 総会(JADS会員のみ) 11:45 昼食 13:15 大会 主催者挨拶 13:30 特別報告「3・11から3か月―MLAの被災と復興―」: MLA関連の被災・復興状況及び文化財レスキュー等救援活動の現状 について、2本の報告を予定しています。 14:30 研究発表会 ○村田良二(東京国立博物館)「国宝・重要文化財のデジタル・アーカイブ 構築とその展望」 ○佐藤祐介(東京国立博物館)「モバイル環境における文化財情報の活用」 ○宮崎幹子(奈良国立博物館)「アメリカにおける博物館収蔵品情報の連携 ―OCLC報告書と現地調査を中心に―」 ○丸川雄三(国立情報学研究所)・宮崎幹子(奈良国立博物館)「文化遺産 オンラインにおける収蔵品情報の連携 基盤について―奈良国立博物館 との連携事例を中心に―」 ○渡邉美喜(東京国立近代美術館)「マクミラン社グローヴ世界美術大 事典にみるアート・アーカイブズの類型とその実例」 17:20 クロージング 17:30 閉会 18:00 懇親会(会費4000円程度) ◆参加申込 下記の申込フォームに必要事項を記入し、送信してください。 http://www.jads.org/FS-APL/FS-Form/form.cgi?Code=2011taikai ◆参加費(資料代含む) ※参加費の一部を、文化財レスキュー(東北地方太平洋沖地震被災文化財 等救援事業)への義援金に充てさせていただきます。 *JADS会員: 1,000円(学生会員 500円) *一般: 2000円(学生 1,000円) ※当日入会で会員扱いとなります。特典としてJADS特製トートバッグを進呈。 学生の方は、当日学生証をご提示ください。 ☆★……………………………………………………………………………☆★ ──────────────────────────────── ◇◆編集後記◆◇ 東日本大震災によって大きく変わった日本から、どのように世界へと発信して いけばよいのか、考えあぐねている向きも多かろうと思う昨今ですが、皆様か らも様々な立場や状況からのご意見、ご感想をぜひお寄せいただきたいと思い ます。よろしくお願い申し上げます。 ご意見、ご感想の宛先: jsik@nifty.com (メール・マガジン編集長:岡本 由起子) ──────────────────────────────── ☆★……………………………………………………………………………☆★ }}