情報知識学会ニューズレター > No.45 (1997.8.1) > イントラネットとJAVA言語

イントラネットとJAVA言語

東京家政学院短期大学英語科 小池澄男

 近年情報通信分野の技術革新はめざましく、特にインターネット利用技術の発達とともに、その利用者が爆発的に伸びてきている。当初は大学等教育機関の研究者達が主であったが、WWW等の登場によりマルチメディアをも扱える環境となり、一般ユーザーや民間企業の利用が急増し、急速に新しい通信手段として大衆化してきた。インターネットを利用する利点は、マルチメディアをも含めた情報を安価に早く全世界に対して発信・収集できる点にある。まさにインターネットは世界に開かれた窓の役割を担うようになってきている。今後インターネットの利用は増加することはあっても、減少することはないであろう。しかし利用者の爆発的な増加により、接続できないとか接続できても通信混雑のために通信速度の低下等の現象が顕著になっている。高速デジタル通信網の早期整備が強く望まれる。最近CATV-LANが注目されている。私の居住する横浜市金沢区にも昨年ケーブルテレビ局ができ、インターネット接続を始めた。電話の数百倍という伝送量は、マルチメディア化し重くなる一方のホームページにアクセスするには好都合である。しかも常時接続で、電話料金やプロバイダの接続料金を気にする必要はない。(10ケ月たった現在も実験中で無料だが、この秋から有料サービスとなる。月額固定制で5000円位とのこと)企業や大学、各種組織などはLANを構築しており、今後は家庭へのインターネット接続環境の整備が進むことになる。光ファイバーが敷設されるまでは抜本的な解決にはなりえないが、その間、ISDNや最近開発された電話線を活用するADSLなどにより、急速に家庭でのインターネット環境が改善されよう。

 インターネットを意識しはじめた企業は急速に増加している。しかし、その利用は企業紹介などの簡単なホームページ作成等のみで、インターネットの重要な役割たる、世界中の情報の共有という部分はほとんど活用していない。今後企業のコンピュータネットワークは、このインターネットを視野にいれたものでなければ、発展性のあるネットワークを構築できない。企業内ネットワークがそのまま世界のネットワークと接続されなければ、限られた地域の閉ざされたネットワークとしてしか機能せず、世界の情報の流れに取り残され、企業活力も失われていくことであろう。

 現在、インターネット技術を応用したイントラネットが注目されている。またインターネットで注目されているJAVA言語についても、イントラネットへの利用という点で、国内外の多くの主要情報通信関連企業がその採用を表明している。今後JAVA言語が、イントラネットを達成する重要な要素になる。

1.C/S方式からイントラネットへの移行

 企業におけるコンピュータの使用形態は、メインフレームによる集中処理方式から、C/S方式の分散処理方式が主流となっている。特に最近では、企業内LANにグループウェアーを導入することが多くなってきた。これらのネットワーク分散処理方式は、処理業務の集中によるサーバーの負担増を軽減させたり、情報管理の危険分散をも意味している。現在の企業内LANは、社内の電子メール・電子掲示板などに利用され、また企業のもっとも重要なデータベース管理が中心である。

 今後の利用形態はどの様なものになっていくであろうか。イントラネットが企業内ネットワークの主流となると考える。その理由は、導入コストが安い、現行の企業内ネットワークの設備をそのまま使用できる、ソフトの品質が一定している、ユーザーの教育を特別に実施しなくても利用できる、また世界の最新のインターネット情報を共有できるなどの利点があるからである。企業は情報の有効利用が今や生命線となってきている。企業に活力を与え、ホワイトカラーの生産性をあげるために、今後イントラネットの導入はますます増加するであろう。

 C/S方式では、電子メールや電子掲示板といった機能の他に、クライアント側もアプリケーションソフトを持ち、ワープロ・表計算・データベースへのアクセスなどクライアント側でも処理可能である。データベースへのアクセスは、C/S方式の重要な処理の1つである。クライアント側で専用のソフトを実行するため、データベース利用時にデータベースのサーバーとクライアントとの間でセッションを張り続けることができる。このためデータベースのトランザクション処理が可能である。

 しかしクライアント側にアプリケーションソフトを持つために、ソフトの変更が生ずると、全てのクライアントのソフトを新しいソフトにインストールしなければならない。このことは多大の費用と管理要員を必要とする。また閉じたネットワークであるために限られた範囲内の情報収集しかできない。

 一方イントラネットでは、クライアント側は必要最小限のブラウザのみあれば、今までのような全ての業務を遂行でき、かつ電子メール・FTP・NetNews・WWWといったインターネットの機能も直接利用可能である。情報の収集発信が限られた範囲から全世界へと広がる。使用するソフトについても常にサーバーがソフトを管理し、必要に応じてクライアントに提供するために、ソフトの変更があってもサーバーが常に最新のソフトを更新できるので、クライアント側のソフトを再インストールする必要はない。またユーザーの操作環境もGUIによる操作であるために、特別な情報教育を必要とせず操作できる。

 しかし、企業の一番重要な情報管理であるクライアントによるデータベースへのアクセスという点に関しては、クライアントとデータベースの間にWWWサーバーが入るために、セッションを張り続けることができない。このためにトランザクション処理ができない。結果としてクライアントとWWWサーバーとの間の情報の量が増加し、クライアントの増加と共にサーバーの負担が増える。このことはユーザーにとっては操作性の悪さが印象に残り、C/S方式の方がすぐれているということとなり、イントラネットの成功も危ぶまれる。次に世界中のネットワークと接続可能ということは、世界中のコンピュータから企業内ネットワークに侵入される危険性があり、企業機密情報の漏洩という問題点もある。いかに世界に広がったネットワークであっても、利用者の要求がなかなか達成されず、しかも機密漏洩という問題点もあれば、多くのユーザーに見向きもされなくなるであろう。

2.イントラネットにおけるデータベース管理

 企業の情報管理の生命線ともいえるデータベースの管理は、イントラネット導入の大きな課題である。C/S方式のネットワークでは、データベースへのアクセスが簡単で信頼性も高かった。イントラネットではどうであろうか。イントラネットでは、クライアントからのデータベースへのアクセスの要求は、WWWサーバが受け、CGIを利用してSQLを発行する。このためにセッションを張り続けることができない。また要求・応答といった通信が増加し、サーバの負担が大きくなる。この欠点を改善しなければ、イントラネットの成功はあり得ない。そのためには、ソフト・コンポーネントの使用が重要になってくる。C/S方式の資産を継承し、イントラネットを構築するには、クライアント側で実行可能なソフト・コンポーネントを使用するのが最善である。

 現在注目を集めているソフト・コンポーネントには、マイクロソフト社のActiveXとサンマイクロ社のJAVA言語がある。ActiveXは、OLEをWWW用に拡張したものであり、OS依存度が高い。また、クライアント側で要求のあったソフトについてサーバ側は、クライアント側に該当するソフトがなかったり、古いバージョンである時に限り、サーバ側からクライアントのソフトを提供する。クライアント側では、一度使用したソフトはディスクに保存しておく。このためにクライアント側でも比較的大きな容量のディスクを必要とする。しかし、クライアントとサーバ間のトラフィックはそれほど増加しないという利点がある。JAVAは、サーバ側からバイトコードという中間言語の形でクライアントに送られ、クライアント側ではブラウザ内でインタープリタ形式で実行される。このために原則としてプラットフォームに依存しない言語である。そのために、Windows・Mac-OS・solarisといった主要なプラットホームで実行可能である。企業において既に様々なマシン・OSを使用していても動作可能でありコスト面で魅力的である。しかしインタープリタ方式によるために実行速度は、現行の1/10程度まで低下する。サンマイクロ社は、この点を改良するためにJAVAインタープリタをチップに書き込んだ形式を発表している。また原則的には、サーバから送られたソフトは実行後メモリから解放されクライアント側には残らない。このためにクライアント側には大きな記憶容量のディスクは必要としない。しかし、ディスクに保存されないために、再度同じソフトを使用するとなると再びサーバから送ってもらう必要が生ずる。このために、C-S間のトラフィックが増加するといった欠点を持っている。

 ソフトコンポーネントを使用すると、サーバから送られたソフトはクライアント側で実行され、直接データベースへSQLの発行可能となり、WWWサーバのCGIの助けを借りる必要がないため、データベースとの間に業務終了まで直接セッションを張り続けることが可能となり、トランザクション処理も可能になる。将来的にはイントラネットが発展した形のアウトソーシングを利用するワークフロー処理が可能になる。商品の広報・受注・資材調達・生産・発注・納品・請求・入金といった、一社だけにとどまらない関連企業すべてをも取り込んだ発展型のイントラネットの構築が可能になる。将来を見すえたイントラネットの普及は、ソフトコンポーネント、なかでもJAVAを使用したソフトの開発が今後の最重要課題となってくるであろう。もっともJAVA言語自体が発展途中にあり、現段階での信頼性と拡張性に欠ける点が改善されなければならない。

3.JAVAのイントラネットにおける可能性

 JAVAはプラットホームに依存せず、既存のデータベースとの間のトランザクション処理が可能であり、アプリケーションソフトの開発も可能である。それゆえに今後のイントラネット時代における発展性は非常に高い。現在のアプリケーションソフトはOSに依存し、OSが違うたびにアプリケーションソフトを変更する必要がある。そしてOSは巨大化し、そのために外部記憶容量もとどまるところなく巨大化してきている。まさに卓上大型コンピュータ化してきているのが現状である。これからは、必要なときに必要なソフトを必要な時間使用するといった簡便性が要求される。

 ネットワークでつながったユーザーのマシンは、あくまでも荷が軽く必要なときに必要なデータを処理できるソフトを動かせることが必要である。ソフトコンポーネントであるJAVA言語を使用してのデータベースへのアクセスは、APIの一種であるJDBCが用意されている。JDBCはマイクロソフト社が1991年発表したODBCを継承している。ODBCは異なるRDBMSに対しても共通のプログラミングを可能とする標準的なAPIである。ODBCは、ドライバマネージャとドライバの2つのモジュールからなり、ドライバマネージャは汎用的であり、各種アプリケーションから利用可能である。同様にJDBCもこの2つのモジュールから構成されている。またORACLE、informix、Sybaseといった主要なデータベースベンダーがJDBC用ドライバへの対応を表明している。現在ではJDBCによるデータベースへのアクセスの環境が完全に整っているとは言いがたいが、近い将来整うであろう。

 JDBC使用によるデータベースは、現在のデータベース利用環境をそのまま継承できるJDBC-ODBCブリッジ利用が進むであろう。しかしこれもJDBCの環境が整えば、より効率化されるクライアントとデータベースサーバが直接セッションを張る2層構造となっていくであろう。しかし2層構造のデータベースアクセスシステムでは、クライアントとサーバ間のトラフィックが増加し、またJAVA自体のセキュリティ機能により、ダウンロードしたホストのネットワークしか操作できないためにシステムの自由度が下がることなどから、将来的にはクライアントとデータベースサーバ間に中間層であるエージェントサーバを設けた3層構造が主流となっていくであろう。3層構造を採ることによりシステムの自由度が上がるとともに、エージェントサーバがクライアントとデータベースサーバの面倒をみるために、システム全体のトラフィックが減少し効率よくシステムを稼働できるからである。エージェントサーバにJAVAのサーブレットを配し、クライアントからの要求が起こると、このエージェントサーバでサーブレットが動作し、JDBC-APIを利用してデータベースへのセッションを張り、最終結果はエージェントサーバを経由してクライアント側へ送られる形態となる。そして、クライアント側・サーバ側共に同じJAVA言語でアプリケーションの作成が可能となり、他言語との連動等を考えずに運用できる大きな利点がある。

 イントラネットは、今までの閉じた企業内ネットワークをWebサーバを用いて世界中のネットワークに開かせるオープンなネットワークである。これにより、一つの共通したプラットホームとしてインターネットが存在することになる。今までのアプリケーションソフトの開発は、常に多種多様なプラットホームに拘束され、同様のソフトをプラットホームごとに作成することを余儀なくされてきた。ソフトの開発効率が非常に悪いものであった。今後は、インターネットという共通のプラットホームのみの対応を考えて開発することが可能となり、ソフトの基準化が促進され開発効率とコストが大幅に改善されるであろう。優良で最新のソフト資産を世界的に共有できる利点は大きい。

 今まで単一企業内で処理されていたビジネス情報が、企業間や顧客間を自由に双方向に行き来することが可能となり、企業の取り扱える情報量が一挙に拡大する。企業は、不動産や店舗を構えることなく小さな本社を可能とし、直接顧客と取引でき、製品コストの低下を可能にする。また受注後のワークフローもアウトソーシング利用により途中の流通や卸を単純化せしめ、一元管理が可能となってくる。不用な在庫の排除、適正な人員の確保、企業取引範囲の拡大による安い資材の調達、流通・卸の削減などにより一層製品コストを低下することができ、企業の競争力が向上する。また、顧客と直接対応するために、顧客ニーズをいちはやく情報として入手でき、新製品の開発をも早期に達成できる。

 いままで日本国内においてコンピュータのネットワーク化はなかなか促進されなかった。その主な理由は、コンピュータは閉ざされた企業内部だけのデータ処理に使用され、情報通信機器としてはあまり利用されなかったことによる。このため、コンピュータを導入しても目に見えるようなコストの削減がなされなかった。イントラネットが導入されると、情報機器と通信機器が一体化されコストの大幅な削減が可能となる。その利点が理解されると、日本国内においてもイントラネットを中心とした企業のコンピュータネットワークは爆発的に普及するであろう。

 しかし当然問題となってくるのは、ネットワークに対する不正アクセスやデータの改ざんなどからどのように守るのかといったセキュリティの問題、国を越えた国際的な代金回収システム等の金銭管理をどのようにするのかといった電子マネーに等に関する技術的な問題とまた急激なビジネススタイルの変化に働く人間がどのように対応するのかといった人間の心の問題を解決しないと、グローバルなイントラネットの達成は不可能である。

 現在これらの問題解決のための技術革新はめざましく、暗号化技術や電子商取引も実用段階に入ってきている。近い将来、信頼性も高まって実用化されるであろう。これらの問題が解決された時のイントラネット構築の中核はデータベース管理技術と、インターネット・イントラネット・データベースを一元的に処理できるJAVA言語になることは問違いない。

 JAVA言語は発表されてからまだ日も浅く、信頼性のあるアプリケーション開発の環境が整っているとはいえない。また、JAVA言語で作成したアプリケーションの信頼性も不明である。しかしJAVA言語の応用は次々と拡張されてきている。デジタル情報を扱うほとんどに利用が可能な言語であり、JAVA言語開発の所期の目標であるあらゆる家電製品等に応用され、家電製品・情報通信機器が一体となって新しい産業を生み出す可能性を持っている。

最終更新日: 2018-04-27 (金) 11:28:10

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